文学

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書かれた―家族

飯島章嘉 ⅰ 死を教える祖母 墓地に立つ祖父 逃げる父 母は捨てた 兄は堕ちた 姉は隠した 叔母の匂いと色 子供は愛されている? ⅱ 高い水草の生える湿地帯で生まれた男や女は 高い水草の生える湿地帯で外を向いて車座になった ここに家族が始ま...
まどろむ海月(西武 晶)

詩と写真『ユーモアの森から』

まどろむ海月  1 夜と私 夜がやって来た挨拶がわりに手元にあったまたたびをさしだすとなんと 長い舌を出して べろっとなめ取った裏返しになってよだれを流しでろでろになったところを見るとどうやら 夜は 猫科らしいのが知れたしきりに もっとくれ...
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短編小説『コールドウォーター・ルール』

求道鞠  ©松岡祐貴  泳ぎながら、それが背後から猛スピードで追いかけてくるのがわかった。  わたしはできるだけ速く水を掻いて必死に逃れようとしたけど、やはり追いつかれてしまった。目の前がどんどんくもりだす。それは背後から、バタフライでやっ...
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短歌集『奇跡~懐かしい日々』

田中義之   高校生若気の至り言い訳にしていい時といけない時代   肩車担ぐつもりが耐えられず思わず落とす情けなき我   水俣の公害問題友と知り図書館で読む苦海浄土   自らを大人とみている高校生所詮は園児が背伸びしただけ   青春の真っ只...
南清璽

連載小説『天女』第五回

南清璽  あの日のこと。令嬢の尊父からあの出奔の計画を糺されたときのことを思い出していた。  伯爵は既に応接間のソファーに座していた。決して、威厳を示さず、むしろ、しとやかといえた。そして、いつもの深みのある落ち着いた物言いが始まった。それ...
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書かれた―祖父  「家族譜」より

飯島章嘉 繰り返し  繰り返される夢 祖父という見た事の無いもの 二度と見る事の無いもの 無いものへの信仰 不知への限りない接近と離脱 長押に上がった肖像の夢 不知への限りない接近と離脱 無いものへの信仰 二度と見る事の無いもの 祖父という...
ゴーレム佐藤

夢日記『銀髪』

ゴーレム佐藤  とにもかくにも部屋中動物で充満していた。  匂いとかはさほど気にならなかったが、とにかく、ちょろちょろするこの、リスがうるさい。犬と違ってそこいらじゅうに糞をするのを、僕は一日中集めてまわる。気にするなと思えばいいのだが、と...
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短歌集『収容所群島』

田中義之  令和と打ち囹圄(れいぎょ)と変換されていくここはまさしく収容所群島  燕子花典雅な構図を繰り返す光琳描く燕子花屏風   差別する言葉をうまく案出し心は隠す地獄の果てに  セロ弾きの独奏これは孤独なり観客1人共犯幻想  家族譜の不...
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短編小説『悦っちゃん』

矢野マミ 「そういえばさ、悦ちゃん、亡くなったんだって……」  久しぶりに会った同期からの報告に驚きながらも、いつかその日が来るのを予感していた。 『悦ちゃん』は、3人目の育休明けに出会った上司だった。社内の有名人だった。50代半ばで金髪の...
いとうあきこ

初投稿エッセイ*名前がない白猫

いとうあきこ  名前がない猫がうちにいる。来た時、真っ白な姿から「ゆき」「しろ」などの名前を考えたが、どれもしっくりとこなかった。  考え疲れ、「人間の中に猫一匹だから『ねこ』でいいか」と今も正式な名前がない。家族はにゃーちゃん、にゃーこな...