文学 その都市 飯島章嘉 ⅰ その都市は極めて奇妙な特徴を持っている すべての建築物は窓を持たず、扉すらない 従ってその都市を俯瞰すると 一見広大な墓地を見るようである しかしどの建築物も天を衝く高層ビルだから 道路から見上げるビル群は銀色の光を蒼穹に反射... 文学飯島章嘉
文学 書かれた―家族 飯島章嘉 ⅰ 死を教える祖母 墓地に立つ祖父 逃げる父 母は捨てた 兄は堕ちた 姉は隠した 叔母の匂いと色 子供は愛されている? ⅱ 高い水草の生える湿地帯で生まれた男や女は 高い水草の生える湿地帯で外を向いて車座になった ここに家族が始ま... 文学飯島章嘉
文学 書かれた―祖父 「家族譜」より 飯島章嘉 繰り返し 繰り返される夢 祖父という見た事の無いもの 二度と見る事の無いもの 無いものへの信仰 不知への限りない接近と離脱 長押に上がった肖像の夢 不知への限りない接近と離脱 無いものへの信仰 二度と見る事の無いもの 祖父という... 文学飯島章嘉
文学 書かれた―祖母 「家族譜」より 飯島章嘉 まず死を見に行く ここから始る コントロール出来る死をいただく 痴呆症の祖母から 空き家の前の側溝でつまずく 湿地帯とくねる道に隠される祖母 空き家の前の側溝でつまずく 痴呆症の祖母から ここから始る コントロール出来る死をいただ... 文学飯島章嘉
文学 書かれた―叔母 「家族譜」より 飯島章嘉 耳の後ろが赤く膨れ上がり 朝焼けのように 蕁麻疹が広がる 意味の分からない 恐怖をかんじる 湿地帯の高い草の中で 白い水鳥の環視の中で 叔母は叫び声をあげる 白い水鳥の環視の中で 湿地帯の高い草の中で 恐怖をかんじる 意味の分... 文学飯島章嘉
文学 詩二篇『家族譜』より「書かれた―姉」「書かれた―兄」 飯島章嘉 書かれた―姉 「家族譜」より 墓地へ駆けてゆく 姉を二階の窓から見た 学校の制服を隠したのを 姉のほこり臭い制服 血の付いた便器にしゃがんだ 汗のにじむ掌で鈍く赤い 姉の隠し持つ勾玉 汗のにじむ掌で鈍く赤い 血の付いた便器にしゃ... 文学飯島章嘉
エッセイ 意外な自分を知る時間~アートセラピーのワークショップに参加して 飯島章嘉 *まどか研究所「アートセラピー実験工房」の中で、「かちかち山」をテーマに描かれたクレヨン画。 なんだかワクワクしながら、木曜日の午後七時からの時間を過ごさせてもらいました。その時間がアートセ... エッセイ飯島章嘉
文学 詩二篇『家族譜』より「書かれた―母」「書かれた―父」 飯島章嘉 書かれた―母 「家族譜」より 母は 捨てる 真昼に閉じた雨空へ捨てる 滑空する白色の鳥が堕ちる所 そこに堕ちる母のものを捨てる 湿地帯に隠された 母の書いたもの そこに堕ちる母のものを捨てる 滑空する白色の鳥が堕ちる所 真昼に閉... 文学飯島章嘉
文学 詩「生き物ソネット」四篇 飯島章嘉 第一篇 犬 転がる空き缶を追う犬 犬は追う生き物だ しかし犬は追わない 目前の暗闇を 餌の残りを掘った穴に隠す犬 犬は穴を掘る生き物だ しかし犬は掘らない 飼い主の墓穴を わたしはそれを不誠実だと考える 少なくともわたしだったら ... 文学飯島章嘉
文学 詩)旅の途中で 飯島章嘉 いつの間にか 来てしまったここへ聞こえる誰かの呼ぶ声声、音の震えが日差しを揺らしている風?風ではない声 声が流れてせせらぎに浮かぶ草の葉をなぶる水か 水ではない。それは水の声私の声 もう聞こえない何もしかし日差しが揺れている 風?... 文学飯島章嘉