野原広子

エッセイ

イタリアの列車で、はい、お手をどうぞ。ドンパン節!

野原広子 「どんどんパンパンどんパンパン。どどパパ、どどパパ、どんパンパン、とくらぁ」 ドンパン節の一節を私は手拍子を入れて大きな声で歌っていた。私ひとりではない。日本のお座敷でもない。1984年の秋、ナーポリからパレルモに向かう長距離列車...
エッセイ

欧州バス旅

野原広子  もうガマンも限界。この身体の奥底からこみ上げる欲望を、今夜こそ叶えてやる。そんな衝動でしでかすとロクなことにはならない。だけどこれほどの惨劇になるとは‥‥。逃げるか。どこへ?  あれは初めて海外旅行に行ったときだから結婚2年目の...
エッセイ

猫とピアニスト

野原広子  19年3ヶ月暮らした飼い猫の三四郎が亡くなって、もう4年もたつのね。その前後に弟と父親、母親が立て続けに亡くなったので、悲しいとか喪失感とかにひたっている間がない。  それが先日、YouTubeで辻井伸行くんのラ-カンパネラをな...
エッセイ

怖くて愛しい沖縄、座間味島

野原広子  沖縄は怖いところ。特に離島はうかつに行くもんじゃない。実際、何度か仕事で訪れたけれど本島を駆け足で通り過ぎるだけ。私に強烈な爪痕を残したあの島には決して近づかなかった。  私が初めて沖縄に足を踏み入れたのは、フリーライターになり...
エッセイ

愛と夢と冒険と 欧州の美容院探訪記

野原広子  茨城の農業高校を卒業した18才の私が上京した目的は、愛と夢と冒険と。この3つにつきる、なーあんてね。キャッ。近所の安カフェ、ベローチェでパソコンをぱちぱちしながら顔から火が噴いたわ。  で、最初からぶっちゃけちゃうと3つの中でい...
エッセイ

泥沼人生にも限界が来る。私がパリで決別したこと。

野原広子  「野原さん、今どちらにいるの?」電話の主はわが洋裁の師のY先生! 4月27日から3日間、東京ビックサイトで開催されているホビーショーに出店しているから遊びに来ない?というお誘いだ。  実は私、震災の少し前に池袋駅前のカルチャーセ...
エッセイ

わがアルバイト人生すごろく〜2

野原広子  ヤングケアラーならぬヤングワーカーで、7才から小遣い賃稼ぎをしてきた私が上京して靴屋の店員になり、その後、いくつかの幸運をつなげて週刊誌の記者になって45年。思えば気の遠くなるような長い月日が流れたんだね。  ライターとして女性...
エッセイ

わがアルバイト人生すごろく〜1

野原広子  私は児童労働者だった、なんていうと次に続く言葉は「児童虐待」かしら。いやいや、そんなことを言いたいんじゃないんだけどね。  私がお隣りのおじさんからたばこ買いを頼まれて「はい、おだちん」と手の上に10円玉を乗せてもらったのは小学...
エッセイ

オバ記者流、借金と生き方講座

野原広子 なんてタイトルをつけたはいいけど、ひゃひゃひゃ、いきなり恥ずかしいわ。65才の今まで貯金らしい貯金をしたことがなくて、あるのは瞬時に答えられる残高だけ。「何を語る気になってんのよ。貧乏人がえらそーに!」と言われたらハイ、それまでよ...