南清璽 連載小説『天女』第八回 南清璽 診療所の勝手口。やはり、産婦人科ならば、玄関よりお邪魔するのは、控えるべきなのだろう。 「すみません。急患です!」 声をかけてみた。ドアの向こうの物音で少々気が止んだ。何分、数度は、試さなければならなと踏んでいたからだ。 「... 南清璽文学
いとうあきこ 「いるだけで傷つく人がいることに、気づく」 いとう あきこ よく、「自分は何もしていないのに」「人に迷惑かけている訳じゃない」という言葉を聞くが、その事柄直結でなくても、人はどこかで必ず人を傷つけ、また自分も傷ついている。 私の最初の子どもは、乳児性突然死というもので生後二か月で... いとうあきこエッセイ
和田能卓 【初登場】カイエ・福永武彦『忘却の河』―〈妣ははの国〉をめぐって― 和田能卓 かつて私は『福永武彦とフォークロアと』と題して、福永文学における民俗・民俗学について論じたことがあった。だが、福永の三番めの長編小説である『忘却の河』に登場した〈妣の国〉について、具体的に論ずることはなかった。(⇒01) そこ... 和田能卓批評・論考
エッセイ 接待備忘録—上野フォルマ 田高孝 田高商店は、かくして、始まった。「銀座フォルマ」として。私は、優秀な売り子だったとは、言ったとおもう。次に、私の手柄。私は、フォルマさん’(銀座の御木本の本店の方)から、ある種の民芸品を委託されたことがある。それは、フォークロアと... エッセイ田高孝