2023-01

原田広美

*原田広美の『ハムレット/オフィーリア』、そしてグリム童話『蛙の王様、あるいは鉄のハインリッヒ』

原田広美 (『オフィーリア』ミレー作より、部分)  夏目漱石(1867~1916)は、イギリスに官費留学する前には、松山中学や熊本五高で英語教師をした。熊本五高で教えたのは、鏡子と一緒になった新婚時代だ。少年時には、講談・落語や漢詩を好んだ...
エッセイ

オバ記者流、借金と生き方講座

野原広子 なんてタイトルをつけたはいいけど、ひゃひゃひゃ、いきなり恥ずかしいわ。65才の今まで貯金らしい貯金をしたことがなくて、あるのは瞬時に答えられる残高だけ。「何を語る気になってんのよ。貧乏人がえらそーに!」と言われたらハイ、それまでよ...
文学

短詩「花花は」

田中義之 草草の名は知らぬらし花花は名は知らぬらし花の咲く咲く 草咲くや名は祝い花八草咲く 鬱という字面の中の暗闇にしばし躊躇いやはり飛び込む 俳諧の人に非らずと皆の言う 毛並み良き我が飼い猫の背を撫でて天使の髪は何色か知る 子猫の子走らぬ...
大輪茂男

[特別寄稿]舞踏小説『鹿のヴァイオリン』

大輪茂男      1  城壁の街ポロロの祭の晩のことである。 湖のある丘陵を渡る風の中でバターや果実を作り出す草原の住人や、遥かな雪山の峰の彼方に神々の水浴場があると信じている森の住人たちも、この日ばかりはポロロの街を目指してやってくるの...
まどろむ海月(西武 晶)

詩画集『春の頂 から』

まどろむ海月 透明な道で すれちがった時 ささやいたのは 君だったのか… 「幸せの頂を見るのが 春の役目だ。」と 長い旅姿のままの 私の冬(かなしみ)よ 水面の きらめきが 遠くから 広がった 扇のように くりかえし くりかえし 君の 遠い...
柴﨑政夫

昭和の時代も懐かしい「私の舞踊史Ⅲ」

柴﨑政夫  昭和20~26年の間、アメリカ進駐軍指導の下、日本は再生してきた。  華族制度の廃止、マサチュ-セッツ州制度を基本とした義務教育の整備。外国語の推奨。しかし、直ぐ実現できるわけもなく、努力する体制で教育推進が図られた。  男女平...
エッセイ

ワークショップについて「揺蕩うわたし」

平塚由香 ワークショップのネタで投稿を続けていこうと思っていたけど、今年になってワークショップ開催に尻込みをしている。 その理由は、なぜだろう? ワークショップをやりたい!という気持ちだけで去年は突き進んで、一度 集客に失敗して怖くなってし...
文学

詩「生き物ソネット」四篇

飯島章嘉 第一篇 犬 転がる空き缶を追う犬 犬は追う生き物だ しかし犬は追わない 目前の暗闇を 餌の残りを掘った穴に隠す犬 犬は穴を掘る生き物だ しかし犬は掘らない 飼い主の墓穴を わたしはそれを不誠実だと考える 少なくともわたしだったら ...
北條立記

短編小説『憐れに憐れな、そして憐れよ!!』

北條立記 1 電車にて  杖つく背の低い老婦人、草色のワンピース姿のぱっちり目の妊婦、ヘルプマークをリュックサックからぶら下げた16歳くらいの女の子、松葉杖で疲れて苦しそうなサラリーマン。全部無視して50分間シルバーシート、そのドア側の所に...
エッセイ

マミのA4一枚、こころのデトックス (2)

矢野マミ 4.死ぬ瞬間  友人からメールが来たので、彼女の了解を得て紹介する。 「先日、母が亡くなりました。入院して、すぐには会えなくて(今はまだ一般病棟でも面会が制限されているから)1週間くらいしてから洗濯物を交換に行き、ナースステーショ...
エッセイ

アートセラピスト養成講座後に学びたいこと

松岡祐貴  セラピーには、学んだあともスーパービジョンという実技指導(というよりも互いに検討するの意が強い)があります※1。勿論、誰もすべての視座から物事を把握することは出来ず、よって互いにより俯瞰的な視座に立ち、より広い深い検討を行うこと...
文学

ユーモア小説:シン・コンペイ島綺譚 (2)

田中義之 ●シン・コンペイ島綺譚 特別篇 ★序章   コンペイ王達とは違う時系列に、つまり、数十年前。テリアのお交りの桃子は、ひなちゃんと同じく、お散歩をしている。桃子もまた一点を見つめているのだった。ひなちゃんが、見つめていたのは、赤ら顔...
エッセイ

夢日記『クリシュナ』

ゴーレム佐藤  いったいあれから何年経ったのだろう。もはや出発の日もその理由も思い出せない。が、間違いなく私はこの日本に帰ってきた。長年旅をともにしてきたクリシュナとこうして別れを惜しみながら珈琲を楽しんでいる。クリシュナ、というのは名前だ...
山本幸生

東洋「哲学」について(2)

山本幸生  実は、いわゆる「西洋哲学」の本を本格的に読み始める以前、私は中国思想にかなりハマっていた。諸子百家と言われる思想家たちのうち、岩波あたりで出ているものはほとんど読んだし、岩波になかった「墨子」などはハードカバーの単行本などを買っ...
エッセイ

思い出:随想「アンチやくざ者ブルース」

田高孝  カラーギャング(池袋)とチーマー(渋谷)の戦い。  それは、いつの事か?  テレビの公開番組で、ツッパリとチーマーが、対決するという企画で、現われた。  両者同人数ずつ集まった。  テレビ画面に向かって、右側に、ツッパリ。左側に、...
批評・論考

[特別寄稿] 蕪村の発句に於ける時間の考察(一)―江戸時代に於ける時間の認識―

桝田武宗  俳句は、大前提として季語を詠み込むことになっています。季語は、暦と深く関わっているものであり暦は時を表します。また俳句は、時の流れの瞬間を捉えて景を詠むというもう一つの前提があります。私が、ここで書く時(時間)とは、「内在的時間...