詩画集『春の頂から』ー 君のいる風景Ⅱ

まどろむ海月

 

午前の森の中に

七つの池を巡った

エメラルド色を湛えた 太古の静寂は

やさしい風をふくむたび

燦めく微笑みを見せた

 

僕たちの前の 永遠の現場

 

蒼空の中には 白い幻のように

わきおこる思いと とめどないあこがれが

その影を落としてゆく・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空 から降りて来た 君 を

水の中から 見上げた僕

 

逆光の中の透明な空間の

向こうには白い鰯雲が・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩膚に充ちた光と沈黙

  あれは・・・

虚空を過ぎてゆく幻影

  たしかに・・

熱泥のささやきと大地の叫び

  ぼくたちの・

始原を逆登る小さな歩みを見守る

  神の掌

 

吃立する白い噴煙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷い込んだ小径を登りつめた稜上は

人知れない 神域 だった

尾根の両側は深く海に落ちていく

 

空間が少し歪んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸を離れて海の彼方へ

潮風と日のかがやき

そのふしぎな解放感のなかで

僕たちは眠った

 

海がひびき 鳥が飛び 波が燦めいた

 

光の中を遠く去りゆく漁船 島影・・