詩画集『春の頂から』ー 君のいる風景Ⅲ

まどろむ海月

 

 

 

 

見上げた月は 皓々として

雪景色の深い谷の 底にまで

光を落としていた

 

白い中空の湯のなかで

魚のように戯れたね

 

 

 

 

 

 

 

紺青の空に 雲

 

高原の蒼空を

何日も さまよった

 

大空の神聖な変貌

永遠の高みへの

憧れと祈り

 

その彼方に君はいた

息遣いが感じられる

身近にも・

 

そして そのとき

世界の底に流れる

星空 ガ見エタ・・

 

 

 

 

 

神聖な夜を鎮ませた 林 の

鮮やかな大気に漂う水蒸気の粒子

朝の光が木洩れて

 

原生のつぶやきが聴こえる

岩と苔の道

 

木の間から見える湖水は

朝日に燦めいて

山間から下りた雲が

かすめては過ぎる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苔むした原生林の斜面を

果てもなく登り続けた

冷たく 底の知れない・・

やさしさ に包まれて

 

霧が 林の中を過ぎて行く

幾度もふり返りながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なだらかな霧の高原を二人は歩いた

現われては消える 木立と

岩肌と 高山草花と

 

草の中に安らぐ君の姿も

這うように 通り過ぎる霧に 隠れて

時々 見えなかったりする

 

どこか べつの世界でも 二人だった

のだろうか こんなふうに