オバ記者流、借金と生き方講座

野原広子

なんてタイトルをつけたはいいけど、ひゃひゃひゃ、いきなり恥ずかしいわ。65才の今まで貯金らしい貯金をしたことがなくて、あるのは瞬時に答えられる残高だけ。「何を語る気になってんのよ。貧乏人がえらそーに!」と言われたらハイ、それまでよ、なんだけどね。

結論から先にいうと、「お金は道具。足りないときは借りたり貸したりすればいい」と本気思っているんだよね。てか、私みたいに不安定なフリーランスだと、自分の手持ちの道具(お金)だけで間に合えばいいのだけど、そうはいかないことだってあるのよ。

たとえば30代、40代はギャンブル狂だったこともあって「半月だけちょっと都合つけて」と友だちに頭を下げたことが何度もあり。そんなわけで逆に「貸して」と言われたら、残高に余裕があれば間違いなく貸す。いや、「貸して」と言われなくても、お金がないと聞いたら「貸すよ」と言うな。

つい最近のこと。職種の違うフリーランスのKさん(37才・男性)から切羽詰まったLINEがきたの。友人の投資話にのせられて、消費者金融から50万円借りて預けた。「その話を信じたというより、いろいろ世話になった彼がここまで熱心に話すんだから、だまされてもいいか」と思ったんだって。

数ヶ月は「配当金」が振り込まれてきた。が、あとは予想通りの展開よ。友人とはピタリと連絡が取れなくなり、そのタイミングで自身の収入源だった会社が倒産。入金がないのに借金返済の催促をされて参っている。

この手の相談ごとって、来る人には来る。来ない人には来ないんだよね。私みたいに「お金は道具」と考えていると来るのよ。で、この時は彼から来るLINEの文字の並びだけで、「貸して」と言いたくても言い切れない切なさが伝わってきて、私のほうが耐えられなくなったんだわ。

LINEを電話に変えて、「私、人にお金を貸すなら5万円って決めているの。それを足掛かりにしたらどうにかなる?」と聞いたら、「えっ? そんな」と電話の向こうで身を小さくしながらほっとしているのがわかるんだよね。

ほんと、便利な世の中だね。「頑張ってね〜。返してね〜」と言って口座番号を聞いた30秒後にはネットバンクから送金できるんだから。そうしたらまあ、彼の喜ぶまいことか!

なんて話をすると「えーっ、お金を貸したら友人関係が壊れるから貸さないほうがいいよ」という人がいる。正直、私はその感覚がわからないんだわ。「5万円返ってこなくて壊れるなら最初からダメじゃん」と言うと、「でも、貸したお金が返ってこないってストレスじゃない?」と顔をしかめるんだわ。

そりゃあ、私だってなけなしのお金を貸した相手から着拒されたり、インスタに豪遊話をバンバン上げられていたら、「金返せ」と言うと思うよ。てか、長い間、人間やってそんな人に何度か引っかかって、そういう人とはもうつきあってない。返ってこなくてもいい人にしか貸さないもの。

それよりお金に妙に頑なな人のほうが困るんだわ。「あの人、お金に汚いから嫌い」と共通の友達の悪口を聞かせるから、何があったのかと思えば、「あの人、いっつも自分のカード払いにして、1円単位まで現金を徴収するのよ。そこまでしてポイント、貯めたいのかって思っちゃう」だって。

「じゃあ、次は私がカード払いするって言えばいいじゃん」と言うと、「そこまでしたくない」って、もうワケわかりません。

絶対にやってはいけないのは、こういう人に借金を申し込むことね。

「あの人からお金貸してと言われたんだけどどうしよう」と職場から家族から、こちらがお金に困窮していると、できれば知られたくない人たちに片っ端から「相談」という名の言いふらしをされた挙句、貸してくれない。

たとえ貸してくれても、借りた、返した、では終わらないの。こっちは約束の期日以内にいくばくかの「お礼」をつけて返したからそれで終了! 借りた道具は返したよ、と思っていたのにそうじゃないんだよね。

「あの人、私にお金借りにきたことがあるのよ」と何年たっても人に言いふらされる。「お金貸してあげたこと、あったよね〜」と恩をきせられる。

そうそう。こういう人に限って、人の時間はタダで使って平気なの。夜な夜な相談ごとの連射砲撃をした挙句、「いつもありがとう。あなたしか聞いてくれる人、いないんだよね」って。まぁ、私とは使っているソロバンが違うと思うしかないよね。

てか、私の使っているソロバンがマトモじゃないことは間違いないけど、最近思うんだわ。もしかしたら「私はふつうよ。トモエの算盤よ」と思っている人でもみんなお金の扱い方はオレ流なのかも、と。お金は数字のようで、実は感覚だったり感情なのではないか。しかもそれは間違いなく本音!

だからお金がらみは面白くて切なくて、あったかくて、時々やり切れないんだと思う。