接待備忘録—上野フォルマ

田高孝


 田高商店は、かくして、始まった。「銀座フォルマ」として。私は、優秀な売り子だったとは、言ったとおもう。次に、私の手柄。私は、フォルマさん’(銀座の御木本の本店の方)から、ある種の民芸品を委託されたことがある。それは、フォークロアとでも、言うべき、安物だった。これが、本店では売れないのだ。変わったインディアンの細工物風だとか。

 この売れない品々を私は、売りさばいた。銀座じゃ売れなくてもアメ横なら売れる。そうかも。いずれにしても、私は、大きなワゴン台の上に、乗せて、「エスノ」と名を打って、売った。これが、売れた。飛ぶように。200も300も売れた。

 おかげで、本店は喜んだ。特に、仕入れた係長の女の人は。

 さて、そこでだ。

 ここで、ユーモアが始まる、

 接待を受けたのだ。母さんいわく、「孝、行ってきなさい。社長の仕事」と。

 私は、何も知らずに、行った。有楽町へ。駅前前で、待ち合わせた。井上課長と。

 初代課長は、西沢さんといった、家が提携を始めた最初の人は。二代目が山上課長だった。太っ、ちょ、の課長。前の西沢課長は、スリムだが、少し、馬鹿だったね。本店へ行ったとき、あったら、酒を飲む格好をして、目をくりくりっとさせたりした。サラリーマンは、酒も修行か?という感じ。今思えば、西沢課長みたいな人には、無理な徳目だったのでは?

 西沢課長は、やや、線の細いまじめな方だった。サラリーマン社会についてゆくには、目がクリクリぐらいの表現しか、できなかったのだろうね。少しの材料で判断してはいけないが。対するに、井上課長は、すごい。その話は、接待でわかる。

 さて、有楽町へ着いて、山上課長と合流。早速、マリオンの正面、ライオンの入っているビルへ。

 エレベターで、上へ。ガラッと扉が、明けば、別世界。くらい照明とバニーガール。酒の席。

 ナイトクラブだ。初めてだ。

 予約席へ行き、山上課長が、バニーガールの見える室内を背景にして、ドッカッと、座る。私は、目のやり場に困るが、まあ、正面にいる山上課長を見ていた。

 これが、夜の銀座か~

 さて、注文を取り、バニーは、去り、私は、おもむろに、切り出した。持ちネタの麻上高校を。これなら、通じると思ったので。

 「僕、麻上高校出身なのです。」と。

 すると、課長は、身を乗り出して、「石川君いるでしょ?」と言い出した。

 えっ、何で知っているの?

 「同級です。」といった。

 そこで、将棋の話になった。

 そうしたら、山上課長は、こういった。

 「僕は、オセロ世界2連覇チャンピオンなのです。」と。

 かくして、話は、弾んだ。

 バニーの怪しい話は、なかった。

 接待=セックスやれるは。

 後に、大政建設のバブル期の統括営業部長に知り合ったら、こういった。

 「店へ行く前に、食事した?」

 「しなかった。」

 「じゃあ、やれた。」

 この世の秘密に触れるところだった。

 しかし、今、思えば、ギャンブルのプロ山上課長にとって。私を、値踏みすることの目的も、あったか? だろうか?

 ドスンと座ったこと。最初に。そして、改まったこと。座って。あのニュアンスは?

 さあ、今日は、どうする?

 でも、私は、接待という言葉を、知らなかった。買春?

 幸い、麻上高校に、石川という棋士がいて、有名で、話題の共有ができて、かわせたのか?

 わからん?

 係長は、助かった。在庫がはけて。責任があったかも。自腹を切る?かもね。そこへ救世主。

 だから、係長のポケットとマネーで、接待を組んだ。上へも通した? でしょうね。課長が来たのだから。部長までもっていった行動さ。許可がいるのだ。

 後に、予算が余ったのか、もう一度接待があった。この時は、平の田中さんが来て、赤坂で、カレーを食べた。腹いっぱい。

 勿体ないことした? いや、どう申し出るの?

 向こうは、ギャンブルのプロよ。アーメン。

 追加注文 裏世界と言う表世界

 接待は、ピンキリ。

 ある友人は、製薬会社の上の治験会社。業者の接待で、30代の時、30代の人妻を自由に写真で選べて、やれたと言っている。

 ミーも、ミキモト・パール(真珠養殖の超高級会社)のジュエリー部の接待で、セックス出来るところだった経験がある。(小説に仕立てた。)

 大手ゼネコン、大政建設のバブル期の統括営業は、言った。

 「バニーのいる飲み屋に行く前、食事をしなければ、やれた」と、基準を教えた。

 さて、世界風俗産業の実体。

 所謂、男の天国は、ブラジル―サンパウロ、ケニア―ナイロビ、対―バンコク(パタヤビーチ)。でも、ここらは、薬がらみ。

 そこで、観光絡みで、フィッリピンが世界一に。真実。ここは、薬が許さない。だから、安全で、世界一に。

 ことわざに、「悪い奴は、パタヤで、死ぬ」と言われる。腹上死か?

 後、ネバダ州のリノとか、一頃の韓国の済州島とか。

 いわゆる、男の天国。

 「いつの時代も、その時代の思考は、その時代に逢わない」 

 小林秀雄「近代絵画」より、着想。