2023-02

まどろむ海月(西武 晶)

詩画集『春の頂から』ー 君のいる風景Ⅲ

まどろむ海月 見上げた月は 皓々として 雪景色の深い谷の 底にまで 光を落としていた 白い中空の湯のなかで 魚のように戯れたね 紺青の空に 雲 高原の蒼空を 何日も さまよった 大空の神聖な変貌 永遠の高みへの 憧れと祈り その彼方に君はい...
批評・論考

[特別寄稿]スサノヲと中上健次 あるいは嘆くボブ・マーリーと哭きいさちる中上健次(二)

矢崎秀行 新宮の熊野灘に面した海岸に座る中上健次 スサノヲと中上健次③ ボブ・マーリー、本名ロバート・ネスタ・マーリーは1945年2月、ジャマイカのセント・アン教区ナインマイルズに生まれた。中上より一つ歳上である。父親は英国生まれの白人、母...
エッセイ

新著『現代音楽とメディア・アートの空観無為』のご紹介

小森俊明    先月(2023年1月)、『現代音楽とメディア・アートの空観無為』(TPAF刊)という共著を上梓した。まどか通信フェニックス2023年2月号では、本著についての寄稿を編集責任者の原田広美さんから提案されたのであるが、昨年、岸田...
田中義之

『猫画集』

田中義之
北條立記

芸術的欲求を遂げるには—3つのライトスケッチ—

北條立記  芸術活動を継続し、創作をより豊かにできるようにするための、自分の気づきや工夫を書いていきたい。美学とかそういう難解な話としてではなく、日常感覚で捉えた、しかし創作において意味あると思うもろもろの事柄である。高校生くらいの子にも刺...
原田広美

*夢解きの始め方~『やさしさの夢療法』まえがき

原田広美 ◎自分の中のすばらしさに向かって、扉を開き続けようとする人々に本書を捧げます。  私達夫婦は夢のワークを始めて八年めになります。朝起きるとすぐに夢をノートに書きとめておく、「夢日記」を毎日書いています。夢は関心を持ち始めると、朝起...
山家誠一

笠井叡新作ダンス公演「『櫻の樹の下には』カルミナ・ブラーナを踊る」の笠井休演を巡って考えた事。

dav 山家誠一  普通こういう事は、世の中的にはなかなかあり得ない話だと思う。2022年11月23日~27日の東京・吉祥寺シアターでの笠井叡新作ダンス公演「『櫻の樹の下には』カルミナ・ブラーナを踊る」で、その当の笠井叡自身が体調不良のため...
山本幸生

東洋「哲学」について(3)

山本幸生  東洋思想、という点について言えば、私はインド思想や仏教などに強く惹かれた時期もあった。特に「自分の中ですべてをいったん壊して、改めて作り直す」のだという禅の考えや、いわゆる「梵我一如」といったインドの古代思想については、「これこ...
批評・論考

【特別寄稿】蕪村の発句に於ける時間の考察(二)—子規と自然主義—

桝田武宗  近代俳句の始祖である正岡子規は、「俳句は写生であり、実景・実物の静止している状態を捉えて十七文字の形態に固定するのが基本である」と定義しました。  子規が、「俳句革新運動」を開始した明治二十年代は、日本の西洋化・近代化が急速に推...
文学

詩二篇『家族譜』より「書かれた母」「書かれた父」

飯島章嘉 書かれた―母  「家族譜」より 母は 捨てる 真昼に閉じた雨空へ捨てる 滑空する白色の鳥が堕ちる所 そこに堕ちる母のものを捨てる 湿地帯に隠された 母の書いたもの そこに堕ちる母のものを捨てる 滑空する白色の鳥が堕ちる所 真昼に閉...
ゴーレム佐藤

夢日記『それは極上の天気の日だった』

ゴーレム佐藤  読み合わせは合同で行うことになった。場所はとある電鉄の終着駅から降りて徒歩で行ける小島だ。潮が引いてる間は砂州によって島まで陸続きになる。僕らは駅で待ち合わせた。初の顔合わせになる女優と同じ列車に乗った僕はホームのベンチで残...
ゴーレム佐藤

夢日記『バカンス』

ゴーレム佐藤  キューバはハバナ。  気持ちのいい風が吹き抜けるアパートの一室で僕は、ゲバラ、カストロそして元恋人の彼氏と麻雀卓を囲む。もうもうと立ち昇るコヒバの煙で手元も見えない中、ラムをあおりながらだらけた勝負が続く。抜け待ちのヘミング...
文学

ある小説に関する思い出

田中義之  『孤高の豚』って云う短編小説を書いたことがある。主語は、三人称複数。ある独裁国家の元首の存亡(実は安泰)を、民衆側から描いた物で、多分にガルシア・マルケスの『族長の秋』の影響がある。  「『孤高の豚』と彼らは呼んだ。それが、蔑称...
まどろむ海月(西武 晶)

詩画集『春の頂から』ー 君のいる風景Ⅱ

まどろむ海月 午前の森の中に 七つの池を巡った エメラルド色を湛えた 太古の静寂は やさしい風をふくむたび 燦めく微笑みを見せた 僕たちの前の 永遠の現場 蒼空の中には 白い幻のように わきおこる思いと とめどないあこがれが その影を落とし...
田高孝

田高孝のスモールギャラリー

エロスの大学 ~大学は、花園。そこでは、「桑原、桑原、みだらなことが行われている。」しかも、官制の指導の下に。 「アミューズ」あるいは「老人と性愛のナンセンスな繋がり」 ~江戸時代からの伝統。ボーヴォワールじゃないが、「女は作られる」。ボー...
文学

怪奇心理小説『愛紅始め』『駒込白馬堂』

田高孝 『愛紅始め』  その子は、同級で、月一の定例のプラネタリュームを見に行く会のメンバーの一人だった。その会は、私が、提案し、中学時代に行なった。仲良し4人組である。  いつも、駒込の上の方の改札で、待ち合わせ、日曜日に、渋谷の東急の五...
エッセイ

舞踏映像「昼下がりのバッカス」を振り返って

北條立記  「昼下がりのバッカス/Afternoon Bacchus」とは、2022年8月に私が舞踏家細田麻央と行った公演タイトルである。その後、その収録映像を編集して一つの映像作品にした。  公演は埼玉県蓮田市のコミュニティーセンターの集...
これまでの目次一覧

………………………◆◇2023年2月号〈目次〉◇◆ここより下は2月号

まどか通信フェニックス編集部 【◆あなたのポケットの中のお友達】になりたい!!!小説も◇詩も◇論考も◇哲学もエッセイも、◇歴史も◇歌集も◇詩画集もあなたは、どこから読むのかなぁ?..................................
ゴーレム佐藤

夢日記『真っ白な闇』

ゴーレム佐藤  目を覚ますと天使が僕の上に浮かんでいる。  背後の光輪はどこまでも眩しく天使は微動だにしない。動いてはいけないような気がして暫くはそのまま枕に頭を沈めていた。  だんだん意識がはっきりしてくるといろいろ考えを巡らす僕がいた。...
批評・論考

[特別寄稿]スサノヲと中上健次 あるいは嘆くボブ・マーリーと哭きいさちる中上健次(一) 

矢崎秀行 新宮の熊野灘に面した海岸に座る中上健次 スサノヲと中上健次①  1998年8月、吉増剛造は小説家の中上健次(1946~92)の和歌山県新宮市でいとなまれた七回忌に出席して、心のこもった追悼の詩を朗読した。以下の通りである。(わかり...