連載ユーモア小説『シン・コンペイ島綺譚』

田中義之

サブ坊 田中義之

おはよーにゃ! 心のワクチンとして、お送りします。

●新編・コンペイ:予告篇

 貓和・貓成・貓和と続く戦後の歴史の中で、今ほど危機的な状況は無いのであった。

 猫の国の王、クチャくんは、心をいためていた。

「コンペイさんは、無事だろうかにゃ?」

 今回は、猫の国がこの世を救う番だ! と、クチャ王は、つぶやいた。

 猫たちの活躍する本篇は、構想中である。期待して待っておられよ!

●新編・コンペイ島綺譚 序章その1

 新型コロナウイルスの三回目の緊急事態宣言が、再び延長が決まった5月の終わりのある日の事である。

 次元の狭間から、クチャくんたちが、この世に現れた。猫のままでは、すぐに移動が、困難になる。今は、人間の姿を、借りている。しかし、耳と尻尾は、隠せない。帽子を被り、ダブダブの、ズボンを履いている。

 一行は、キジトラのミータロウ・茶トラのクチャくん・ハチワレのサブ坊・白猫のはっち、の四人である。

 それぞれが、養い親の、藤井君・コンペイ(筆者である義之)・良子さん・shezooさん、に成りすませている。

 兜町の東京証券取引所玄関前に、出現したのだった。

 暑い日の、午後3時である。

 降魔の術をかけているので、コロナウイルスには、感染しないが、それぞれ、工夫を凝らしたマスクを、着用している。

 神保町の、良子さんのところへ行って、事情を、説明しようと、北に向かった。

おはよーにゃ! 今日も、よろしくにゃ! 

●新編・コンペイ島綺譚 序章その2

 人間の仮の姿は、長くは続かないのだ。月光を浴びると猫に戻ってしまう。

 とはいえ、昼間は眠い。気付に、またたびパウダーを、皆は舐めながら歩いている。二足歩行は苦手なのだ。お腹が減ったにゃ! と、ミータロウが訴えている。クチャくんが、持っていたチャオチュールを、カバンから出して、ミータロウに渡した。

全界の猫ちゃん 田中義之

●新編・コンペイ島綺譚 序章その3

 チャオチュールを舐めながらミータロウが云った。

「どうして、こんな事になったんだろうにゃ? もう三年にもなってる、人間ってバカなのかにゃ!」

 自らも執政者であるクチャくんが、辛そうに答える。

「人間だって、そんなに愚かでは無いに違いないにゃ! きっと、なんとかなるにゃ! 人間だっていい所あるにゃ! 僕らが可愛がってもらっているのが、その証拠にゃ。」

●シン・コンペイ島綺譚 序章その4

 神田神保町に到着した。すずらん通りを歩いている。サブ坊が道案内している。

 とあるオフィスビルに入っていく、もちろん「薔薇十字探偵事務所」などではなく、「○○編集プロダクション」とプレートの貼ってある階で、エレベーターを降りる。

 サブ坊は、ここへ来たことは無いはずなんだけどにゃー、とクチャくんは、思ったけれど「ああ、これはコンペイさんの小説の中だった事に気が付いて、進行の都合上なんだにゃ! ははあ! なるほどね。まあ良いにゃ」と、独りごちた。

 部屋に入ると、良子さんが居た。

●シン・コンペイ島綺譚 序章その5

 さて、ここで不思議に思われる読者諸兄姉に答えておこう、

「どうして、自分自身に化けているサブ坊に、良子さんは驚かないのだろう?」

 猫たちを愛する人々は、猫の目を持っているのである。他人を外見などでは判断していないのである。言葉を変えれば、真実が見えているという事である。

 と言うわけで、目を上げた良子さんはこう言った。

「クチャくん・ミータロウくん! 初めまして、サブ坊! 我が職場にようこそ!」

 驚くどころか、ワクワクとして笑みさえ浮かべているのだった。 

●シン・コンペイ島綺譚 序章その6

 良子さんは、校正の仕事中に手を止めた。

「まぁ! クチャくん! 会いたかったわ! よろしくね」

(続く)