短歌集『奇跡~懐かしい日々』

田中義之

 

  高校生若気の至り言い訳にしていい時といけない時代

 

  肩車担ぐつもりが耐えられず思わず落とす情けなき我

 

  水俣の公害問題友と知り図書館で読む苦海浄土

 

  自らを大人とみている高校生所詮は園児が背伸びしただけ

 

  青春の真っ只中なる生徒たちかけがいのなき少年少女

 

  勉学の大切さなどあの時はつゆにも知らず遊び呆けて

 

  校庭の芝生はずっと根付かずに緑の塗料で誤魔化しながら

 

  時計塔不吉に刻む時間かな生き急ぎつつ死に遅れたり

 

  暗緑の黒板に書く理想とは黒板消しで一秒で消え

 

  授業サボり喫茶店にて煙草吸う不良ごっこの幼い遊び

 

  女生徒を見る目が違う君といておくての我と早熟の彼

 

  制服は囚人服と決めつけて肩に重たい受験生活

 

  僕らには確かにあった夢という映画演劇スケッチブック