花と緑の癒し~「園芸療法」のお話〜

柴沼敦子

 皆様は、「園芸療法」をご存じでしょうか?

 私が園芸療法を初めて知ったきっかけは、まったくの偶然でした。

 2020年2月末、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、全国の学校に対し一斉の臨時休校措置が取られ、年度をまたぎ同年6月までそれが続きました。

 その当時私は小学校長を務めており、休校中自宅で過ごす子供たちのことを案じながらも、どうすることもできないもどかしさを感じながら、しんと静まり返った学校に通う毎日でした。

 そんな中、私と家庭や児童との接点は月に1度の「学校だより」の発信でした。

「ステイホーム」が続く中、多くの人が大きなストレスを感じているという報道が盛んになされていた頃でしたので、「学校だより」には何かストレス解消に役立つことを書こうと思い、いろいろ考えていたところ、かつて新聞で読んだ記事のことをふと思い出しました。

それは、不登校の子供たちが通う教室で近くの公園の草花の管理を任され、彼らがスタッフと共に園芸作業を行う中で、公園を訪れた人から「がんばってるね」とねぎらいの言葉をかけられたり、「きれいね」と喜ばれたり褒められたりしたことで自己有用感や達成感、やりがいなどを感じ、次第に元気になっていった……というような内容でした。

 この記事をもう一度読み返して参考にしたいと思い、いくつかのキーワードを入力して検索しましたが残念ながら見つかりませんでした。

 しかし、このとき「植物の癒し」というキーワードの検索によって、たまたまトップに現れたのが兵庫県立淡路景観園芸学校でした。そこは、「植物や緑の景観を用いた癒し」=「園芸療法」について学べる学校であるということが分かりました。

 そのホームページを見て、まずもって、学校のキャンパスが大変美しい景観であることに心を奪われてしまいました。そして、今まで全く知ることのなかった「植物を用いた療法」というものにとても興味を惹かれました。

 私は小さいころから植物が好きで、植物図鑑を見たり野山を歩き回って珍しい草花を見つけたりすることがとても好きでしたし、小学生の頃の夢はお花屋さんになることでした。

 定年後は何か花に関わる仕事をしたいと漠然と考えていた私は、迷うことなく学校の資料を取り寄せ、学校説明会に参加するため淡路島に出かけ、受験を決意しました。合格を果たすと、定年退職後すぐに淡路島での学生生活を始めたのです。こんなにトントンと思うがままに行動していく自分に、我ながら驚きつつも、植物への思いに突き動かされるように新しい生活に飛び込んでいきました。

 以上が私と「園芸療法」との偶然の出会いです。

 今では偶然というより必然であったのかもしれないと思っていますが……。

 

次回からは、「園芸療法」がどのようなものかということを何回かに分けてお伝えしていきます。