西之森涼子

エッセイ

五感の冬~サトウハチロウが見た風景

西之森涼子  年が明けるととたんに寒さが増す。  そんな気がするのは、子供のころからなんとなく12月の慌ただしさが好きで寒さよりクリスマスや大晦日の楽しさに日々を過ごしてきたせいだろうか。  冬の匂い  冬と言われれば思い出す匂いは、年末に...
エッセイ

思い出エッセイ「川辺のビキニ」

西之森涼子  子供達の夏休みもとうに終わったというのに、今年の猛暑は長く夏はこのまま終わらないのではないかという錯覚に陥った。  通勤経路を急ぐ朝、ヒラヒラと舞い落ちる木々の葉を目にして空を見上げると夏の青さとは違う水色の秋の空に気付いた。...
エッセイ

思い出エッセイ「祖母と着物」

西之森涼子  母方の祖母の生きがいは、おしゃれをすることだった。祖母には似ず、おしゃれが苦手な母は半ばあきれながら、それでも亡き祖母に愛着を覚えながら、懐かしそうに話す。  明治生まれの祖母は、最初の結婚で娘を授かるが、スペイン風邪で夫と子...
エッセイ

思い出エッセイ『梅香る里の夏』

西之森涼子  東京といっても山間部に位置し、急流の川が町に沿う我故郷の冬は、冷たく厳しい。 都心でちらちらと風花が舞っている時は、もうこの町には雪が積もり始めている。       それでも私は、幼少時に見たこの町の四季の美しさが心にあるから...
エッセイ

初投稿エッセイ*変わりゆく故郷~紫陽花の坂道にて

西之森涼子  明るい夏の日差しに光る水面、川底の小石が宝石のように美しく見えるのは水が澄んでいるからだ。  その宝石たちの上に、影を映して小さな魚が泳いでいく。  幼い頃から見慣れた故郷の夏なのに、いつまでも見飽きずに川辺に立っていた。  ...