
みなみきよじ
1964年5月15日生。大阪市出身。裁判所職員。サイト「小説家になろう」で自作の小説を発表。現在は、Facebook で文筆活動、SNSで俳句を投稿している。
- 連載小説『天女』第七回南清璽 「待って下さる?」 その声には幾分か重みがあった。でも、これは聞こえがいい様に言ったまでで、もう年増にかかろうとしている年頃だったから、生娘の様な声は持っていなかったのだ。だが、その声の深みには、何某かの知性を … 続きを読む
- 連載小説『天女』第六回南清璽 「今回の仕儀については、さぞかし蔑んでいるのだろうが。」 そんな私の物言いに対して、当のKは、こう述べた。 「完全に否定はしないが、お前が悪事をなさなかったんだから、良かったと思っているよ。」 「それは、友情の … 続きを読む
- 連載小説『天女』第五回南清璽 あの日のこと。令嬢の尊父からあの出奔の計画を糺されたときのことを思い出していた。 伯爵は既に応接間のソファーに座していた。決して、威厳を示さず、むしろ、しとやかといえた。そして、いつもの深みのある落ち着いた物 … 続きを読む
- 連載小説『天女』第四回南清璽 私が、こんな風に御令嬢から頼られたのも、そう、その言葉を借りれば「人がよさそうな」という処か。もちろん、当初は、いわば煮え切らない、あいまいな態度を示してしまっていた。何分、伯爵家の令嬢故、向後も続くであろう、 … 続きを読む
- 連載小説『天女』第三回南清璽 確かに、ある種、無償の行いだった。だが、ここに高貴な動機があったのだろうか。敢えて、無償としたのは、昇華させる意味を持たすためだった。そう、あくまで無償の行いだったと。一方、臆面もなく、この昇華という言葉を使う … 続きを読む
- 連載小説『天女』第二回南清璽 この日、令室は、ハ短調の楽曲を所望された。当初、ベートーヴェンのピアノソナタをと考えたが、独逸国の留学時に楽譜として手に取ったシューベルトのピアノソナタが忘れられず、知己を通じ、その楽譜を借りた。今回のサロンで … 続きを読む
- 連載小説『天女』南清璽 迂闊だった。その場を和まそうと微笑んだのに過ぎないのに、当の令室は、それを嘲りと捉え、例の如く、私に、折檻を施そうとするのだった。 大凡、彼女の面前で、微笑みを浮かべること自体禁忌だった。それは、先にも述べた … 続きを読む