【初登場*小説タッチ】何故か『よんま』さんがいた。

KO.DO.NA

雑司が谷にある病院に行った。

そもそも私には持病が多く常に3カ所の病院に行っている。

帰りの明治神宮前駅で地下鉄を待っている時。

何故か『よんま』さんがいた。

久し振りの再会なので声を掛けた。

因みによんまさん、と言うのは、こう言う電子音楽家である。

「よんまさんじゃないですか!」

すると男性は私に向かって

「よんま?誰ですか?それ」

「え?よんまさんはよんまさんですよね。ねぇ、よんまさん」

「私はよんまさん、じゃないですよ」

「いやいや、よんまさんですよね?だって、どう見たってよんまさんですし」

「そもそも誰ですか?『よんま』って」

「よんまさんは、電子音楽家の大家でして…」

「電子音楽?私が好きなのは浜崎あゆみですよ?」

「え?よんまさん、浜崎あゆみが好きだったとは意外ですね」

「いや、だから私はよんまさんじゃないですって」

「じゃあ、誰なんですか?」

「私は村上春樹です」

「はぁ?なんで村上春樹なんですか?」

「昔、父と母の馴れ初めが文学サークルだったんですよ」

「それで村上春樹ですか」

「まぁ、そうですけど・・・ってか、見ず知らずの貴方になんで私の生い立ちを話さなきゃならんのですか」

「じゃあ、『よんま』と言うのは芸名で本名が村上春樹と」

「だから、そもそも、よんまって誰ですか?」

「だから、電子音楽家で自作シンセサイザーで演奏活動をしいてる・・・」

「演奏活動?」

「やってないんですか?」

「昔、学生時代にフォーク・バンドをやっていましたけど」

「バンド名は?」

「『とんぼ』でした」

「長渕剛じゃないですか」

「相方が長渕剛のファンだったんですよ」

「本名が村上春樹なのんに?」

「私はボブ・ディランをやりたかったんですけどね」

「ボブ・ディランはやったんですか?」

「いやー、私は英語が駄目で歌詞を聞き取れなかったんで諦めました」

「じゃあ、どういう音楽だったんですか」

「ハワイアンでした」

「ハワイアン?さっき、フォークって言ったじゃないですか?」

「まぁ、言葉のあやですよ。それにハワイアンとかダサいから言いたくないじゃないですか」

「でも、意外だなぁ。よんまさんがハワイアンをやっていたなんて」

「だから、私は村上春樹であって、よんまさんじゃないですよ」

「じゃあ、逆に聞きますけど、貴方が『よんまさん』じゃない証拠と言うか理由はあるんですか?」

「いや、あるわけないでしょ!大体、誰ですか。貴方は」

「いや、以前、私のイベントに出演してくれたじゃないですか。インド料理店も一緒に食べたし」

「私は貴方とは初対面ですよ!」

「でも、貴方は自分自身を『よんまさん』ではない、と言う証拠を持ってないでしょ?」

「そりゃないですけど」

「こうなった以上、貴方が『よんまさん』じゃないと言うのは論理的に無理がありますね」

「どういう論理なんですか!それは」

「よんまさんは唯一無二ですし、貴方が『よんまさん』ではないと言うのは証拠もアリバイもないんですからね。それに貴方はどこを、どう見たって『よんまさん』ですよ」

「例えば?」

「ポケットに煙草があるでしょ?よんまさんは喫煙者ですし、左ポケットにはハイパーヨーヨーがあるでしょ?よんまさんはハイパーヨーヨーの全米チャンピオンなんですよ。」

「いや、ハイパーヨーヨーは甥っ子から貰っただけですし、私は海外なんて行ったことはないですよ。それにポケットに入っているのは煙草じゃなくてスマホですよ」

「え?」

「え?」

「もしかして、よんまさんは『よんまさん』じゃないんですか?」

「だから、何度も言っているじゃないですか!私は村上春樹であって『よんまさん』じゃないですって!」

「おかしいなぁ・・・よんまさんが2人いるとなると人口の辻褄があいませんし。」

「それ、アンドレ・ザ・ジャイアンツじゃないですか」

「おー!流石はよんまさん。分かっていらっしゃる。『1人と呼ぶには大きすぎる!2人と言うと人口の辻褄が合わない!』」

「古舘伊知郎は良いアナウンサーでしたね。昭和プロレスは夢がありました」

「あの頃は全てガチンコだと思ったもんですが」

「総合格闘技も悪くないんですけどね。やっぱ夢がないですよね。」

「やっぱり、よんまさんと話すと面白いなぁ」

「だから、私はよんまさんじゃないですって!」

「でも、よんまさんじゃない、と言う証拠はないんでしょ?」

「そもそも、そんな証拠を持ち歩いている方がおかしいでしょ!」

「貴方がよんまさんである証拠はあるんですけどねぇ」

「例えば?」

「今、イヤフォンで聴いている音楽はYMOでしょ?よんまさんはYMOのファンですし、先ほどから右手でハンドスピナーを回しているでしょ?よんまさんはハンドスピナーの名手なんですよ。あと、眼鏡ですよね?。よんまさんは偏差値30の高校からイェール大学に進学する為に高校時代、1日30時間と言う矛盾のみを条件にした猛勉強をして、6度あった視力が0.2まで落ちたので眼鏡なんですよ。で、イェール大学ではシェイクスピアを研究していたんですけど。」

「この眼鏡は伊達眼鏡なんですけど」

「え?」

「え?」

「でも、YMOとハンドスピナーですよね」

「いや、私が好きな音楽は浜崎あゆみですって。サブスクも浜崎あゆみしか入ってませんし。自慢じゃないですけど浜崎あゆみのファンクラブの番号は3番です。売れる前からファンなんですよ。」

「ハンドスピナーは?」

「いや、今日、職場の同僚からもらったんですよ。これ、何が楽しいんですかね?」

「でも、大学はイェール大学でしょ?」

「いや、偏差値30は同じですけど、努力しなかったので育英館大学でした。」

「学科は?」

「情報メディア学部です。シェイクスピアは読んだこともないですよ。アメリカ人でしたっけ?シェイクスピア。」

「シェイクスピアはイギリス人ですよ。おかしいなぁ。よんまさんがシェイクスピアも読んでないし。イェール大学でもないし、眼鏡は伊達眼鏡なんて」

「よんまさんじゃないんですよ。私は」

「おかしいなぁ…よんまさんは正直さと嘘をつかない情に厚く、義理人情に厚い『令和の聖徳太子』と言われているんですが」

「『平成の前田利家』とは言われたことはあるんですけどねぇ」

「なんで前田利家なんですか?」

「…私、実はロリコンなんですよ。メルカリとかで小学生のスクール水着とか買っちゃうんですよ。ジュニア・アイドルとか堪らんですし。誰が履いたか分からないようなブルマとか、ヤフオクで数十万円単位で買っちゃうんですよ。『家なき子』の頃の安達祐実とか最高です。『家なき子』はVSHとLDとDVDとBlu-rayで持っています。あの頃の安達祐実は天使ですよ。まぁ、これは普段は内緒にしていますが。…ってなんで初対面の貴方に私の性癖を語らなくちゃならんのですか。」

「そりゃあ、私とよんまさんの仲じゃないですか。男同士、隠し事はナッシングですよー」

「いや、貴方とは初対面ですよ。男同士とか友情とかないですって」

「だって、ロリコンとか自分の性癖を語ってくれるじゃないですか。もう、これは堅い友情ですね」

「まぁ、確かにロリコンを打ち明けたのは貴方が初めてですけど」

「もう、私達は友達でしょ?」

「うーん。思えばかれこれ2時間も立ち話をしているワケですからね」

「LINE交換しません?そう言えば、よんまさんのLINEって知らないんで」

「私はよんまさんじゃないですけど…まぁ、友達少ないから良いですけど」

「じゃあ、LINE交換ですね」

「まぁ、良いですけど」

よんまさんとLINEを交換出来たので良い1日だった。

思えばよんまさんと2時間も話したのは久し振りである。

帰宅してからよんまさんからLINEが来た。

『村上春樹

今日は友達になってくれてアリガトウ(^0^)』

誰だよ、村上春樹って。

気味が悪いのでアクセス・ブロックにした。

実際のよんまさんは、こう言う人である。

WEBサイト

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音はバンドキャンプで聴けます。

murastudio
村スタジオ

電子音楽家の大家。


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◇以下、夏のイベント情報

鳥の会議#11

riunione dell’uccello

Ben “Baby” Copperhead東京公演

@BAR GARIGARI

2024/08/20(火)

Open 18:30/start 19:00

Charge1500円(1ドリンク付き)

出演

Ben “Baby” Copperhead(from NYC)

鶯色

KO.DO.NA




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