ゴーレム佐藤

エッセイ

夢日記『逃げろ』

ゴーレム佐藤『逃げろ』出来る限りの食料をカバンに詰め、娘の手を引いて物音立てぬよう静かにドアをあける。午前二時を回ったところだ。確か通りとこの路地の交差するところの林に乗用車が一台止まっていた。問題はどうやって音を立てずに出来る限り遠くまで...
ゴーレム佐藤

夢日記『広末涼子』

ゴーレム佐藤うつつの夜が続く。眠い…眠いんだけどちゃんと眠れない。眠ったと思ったら目がさめて10分しかたってない。でも眠いから動けない。目を瞑ると目が冴える気がしてしまう。朦朧としながら動けないでいる。夢か現か、ってか夢だよな。長い夜だ。 ...
ゴーレム佐藤

夢日記『風景』

ゴーレム佐藤 気がついたら煙草がフィルタのところまで灰になっていた。あわてて灰皿に押し付けた時、いきなり風景が見えた。蒼い海。蒼い空、風までもが蒼い。 などということは微塵も無く、眼前には渋い顔をした女が一人。ナチュラルに魅せようとしている...
ゴーレム佐藤

夢日記『ぐるぐる』

ゴーレム佐藤 壁がね動いてるんです。ウルトラQのオープニングが極彩色になった感じで。逆に動いてないものがないんです。ワタシ以外の全てが渦を巻いて動いてるんです。ワタシは動けないんです。次第にクダから入ってくる酸素の分子までもが動き回ってるこ...
ゴーレム佐藤

夢日記『瞼の絵』

ゴーレム佐藤 夕べは寝つきが悪く、マイスリーのお世話になった。 それにしてもなかなか寝付けない。なんか気になる、というかなんかいる気がする。いや、息子は隣で寝てるんだけどそれとは別に「何か」いる。 ようやくウトウトしだしたところ、起こされる...
ゴーレム佐藤

夢日記『銀髪』

ゴーレム佐藤 とにもかくにも部屋中動物で充満していた。 匂いとかはさほど気にならなかったが、とにかく、ちょろちょろするこの、リスがうるさい。犬と違ってそこいらじゅうに糞をするのを、僕は一日中集めてまわる。気にするなと思えばいいのだが、とにか...
ゴーレム佐藤

夢日記『目覚めよと呼ぶ声あり』

ゴーレム佐藤 たたみかける仕事の雑多さに拘泥しながら、寄せては返す波のように繰り返し運行する星々の海に溺れかけていた。只々打ち続けるキーボードがかちゃかちゃと何かを訴えかけているような気がしたけれど、息をすることも忘れていた僕は自分の喘ぎに...
ゴーレム佐藤

夢日記『闇の左手』

ゴーレム佐藤 寝ていたら背後から僕の手を取るものがいる。手を取られていることに気を取られていたら僕の足を掴むものがいる。 暖かい手はすがるように僕を掴んで離さないが、その力の握り方には微かな憎悪をも感じた。 聞こえるは静かな息遣いと指先から...
ゴーレム佐藤

夢日記『番号』

ゴーレム佐藤 玄関のドアにぶらさがる番号札、いつから下がっているんだろう。 部屋番号とは全く別の番号が手書きで書き記してある。となりの部屋をみるとやっぱり手書きの番号札がぶら下がっている。その隣も向かいも13桁の数字がぶら下がっている、連番...
ゴーレム佐藤

夢日記『それは極上の天気の日だった』

ゴーレム佐藤 読み合わせは合同で行うことになった。場所はとある電鉄の終着駅から降りて徒歩で行ける小島だ。潮が引いてる間は砂州によって島まで陸続きになる。僕らは駅で待ち合わせた。初の顔合わせになる女優と同じ列車に乗った僕はホームのベンチで残り...
ゴーレム佐藤

夢日記『バカンス』

ゴーレム佐藤 キューバはハバナ。 気持ちのいい風が吹き抜けるアパートの一室で僕は、ゲバラ、カストロそして元恋人の彼氏と麻雀卓を囲む。もうもうと立ち昇るコヒバの煙で手元も見えない中、ラムをあおりながらだらけた勝負が続く。抜け待ちのヘミングウェ...
ゴーレム佐藤

夢日記『真っ白な闇』

ゴーレム佐藤 目を覚ますと天使が僕の上に浮かんでいる。 背後の光輪はどこまでも眩しく天使は微動だにしない。動いてはいけないような気がして暫くはそのまま枕に頭を沈めていた。 だんだん意識がはっきりしてくるといろいろ考えを巡らす僕がいた。それに...
エッセイ

夢日記『クリシュナ』

ゴーレム佐藤 いったいあれから何年経ったのだろう。もはや出発の日もその理由も思い出せない。が、間違いなく私はこの日本に帰ってきた。長年旅をともにしてきたクリシュナとこうして別れを惜しみながら珈琲を楽しんでいる。クリシュナ、というのは名前だっ...