「最後の花火」——フジファブリック『若者のすべて』にきこえる自己予言 

          山田 浩貴

 

 日本のバンド、フジファブリックが演奏する『若者のすべて』は、志村正彦(1980年7月10日~2009年12月24日、29歳没)が作詞・作曲した楽曲である。志村はこのバンドでボーカルとギターを担当していた。

 

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CG制作:山田浩貴

 


 この楽曲は2007年11月7日にリリースされたので、志村はそれから2年あまりしか生きることができなかったことになる。志村は若者のまま亡くなった。

 


 この曲のサビで、

 

最後の花火に今年もなったな

何年経っても思い出してしまうな

ないかな ないよな

きっとね いないよな

会ったら言えるかな

まぶた閉じて浮かべているよ」

 

志村は歌う。

 

 「最後の花火」。この言葉は、二つのことがらを暗示しているといえる。

 

 一つは「夏の終わり」である。それは、特有のうつろな気分をかもし出している。燦々(さんさん)と照っていた夏の太陽の光とは違う、陽の翳(かげ)りが感じられ、物寂しさが心からにじみ出てくる。一種の没落感がそこにはある。

 

 二つめは「志村の死」である。今となっては故人となった志村が、「あの花火は最後だったなあ」という感慨をもって歌っているように感じられる。

 

 こうして、「夏の終わり」は「志村の死」と重なり、二つは渾然(こんぜん)一体となる。

 

 志村は、死を予言していたという気がしてならない。少なくとも、そう思わせるものがある(なお、志村正彦の死因についてはいろいろ憶測されているが、いまだ明確にはわかっていない)。

 

 

 以上、「予言」に関していえば、筆者が想像力をはたらかせて書いた。

 

 

 『若者のすべて』は、TOKYO FM「やっぱり聴きたい!夏の終わりの名曲BEST10」(2019年)の3位にランクインしている。

 

 

初出:note 「山田 浩貴――芸術の楽園」(2023年4月16日)。初出の文章を加筆・修正。

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