文学

ゴーレム佐藤

夢日記『ぐるぐる』

ゴーレム佐藤 壁がね動いてるんです。ウルトラQのオープニングが極彩色になった感じで。逆に動いてないものがないんです。ワタシ以外の全てが渦を巻いて動いてるんです。ワタシは動けないんです。次第にクダから入ってくる酸素の分子までもが動き回ってるこ...
文学

詩とイラスト「その都市」

飯島章嘉ⅰその都市は極めて奇妙な特徴を持っているすべての建築物は窓を持たず、扉すらない従ってその都市を俯瞰すると一見広大な墓地を見るようであるしかしどの建築物も天を衝く高層ビルだから道路から見上げるビル群は銀色の光を蒼穹に反射させ神々しさを...
文学

小説『回帰 或いは、テレ・オフ』

田高孝 2017年6月17日、母死去の報が、妹より、あった。深夜だった。私は、かねてからの、計画を実行することにした。 それは、電話回線外し。うちは、電話は、3台ある。携帯はない。そして、インターネット回線で、全部、つながっている。黒電話も...
文学

短編小説『泡沫(うたかた)の日々』コールドウォーター・ルール2

求道鞠 わかる? 彼女は死なないのよ。夫の中で永久に。だって私よりひとまわりも若いんですもの。 君は微笑んでいる。そのアルカイックにシールされた微笑みにはおそらく、熟年の怒りが含まれているのだろう。几帳面に膝に揃えられた指先が、わずかな震え...
文学

怪奇心理小説『西ヶ原クロス・ロード』

田高孝 お前が、自分で投げたものを捕らえている間は、すべては、手慣れた技量に尽き、うるところは、乏しい! お前が、思いもかけず、永遠の競技相手、運命の女神が、かつてお前に、お前めがけて、まさに、熟練の弾みをつけ、神が作り上げた大きな橋のあの...
まどろむ海月(西武 晶)

詩と写真「星空の出来事」Ⅰ~Ⅵ

まどろむ海月(西武晶) Ⅰ夜の頁星空からあなたは振り返る 貴女はふりかえる ともしびに重なる微笑み 細い指先星座へと続く階梯は途絶えたままこの小雨のように降りしきるものは何なのか 白い小径の途上で かさねた出逢い かわされた言葉 真紅の花吹...
南清璽

連載小説『天女』第六回

南清璽「今回の仕儀については、さぞかし蔑んでいるのだろうが。」 そんな私の物言いに対して、当のKは、こう述べた。「完全に否定はしないが、お前が悪事をなさなかったんだから、良かったと思っているよ。」「それは、友情の顕だともいうのかね。」「そう...
ゴーレム佐藤

夢日記『瞼の絵』

ゴーレム佐藤 夕べは寝つきが悪く、マイスリーのお世話になった。 それにしてもなかなか寝付けない。なんか気になる、というかなんかいる気がする。いや、息子は隣で寝てるんだけどそれとは別に「何か」いる。 ようやくウトウトしだしたところ、起こされる...
文学

書かれた―家族

飯島章嘉ⅰ死を教える祖母墓地に立つ祖父逃げる父母は捨てた兄は堕ちた姉は隠した叔母の匂いと色子供は愛されている?ⅱ高い水草の生える湿地帯で生まれた男や女は高い水草の生える湿地帯で外を向いて車座になったここに家族が始まる父と呼ばれる者 それは逃...
まどろむ海月(西武 晶)

詩と写真『ユーモアの森から』

まどろむ海月 1 夜と私夜がやって来た挨拶がわりに手元にあったまたたびをさしだすとなんと 長い舌を出して べろっとなめ取った裏返しになってよだれを流しでろでろになったところを見るとどうやら 夜は 猫科らしいのが知れたしきりに もっとくれろと...
文学

短編小説『コールドウォーター・ルール』

求道鞠 ©松岡祐貴 泳ぎながら、それが背後から猛スピードで追いかけてくるのがわかった。 わたしはできるだけ速く水を掻いて必死に逃れようとしたけど、やはり追いつかれてしまった。目の前がどんどんくもりだす。それは背後から、バタフライでやってきた...
文学

短歌集『奇跡~懐かしい日々』

田中義之  高校生若気の至り言い訳にしていい時といけない時代  肩車担ぐつもりが耐えられず思わず落とす情けなき我  水俣の公害問題友と知り図書館で読む苦海浄土  自らを大人とみている高校生所詮は園児が背伸びしただけ  青春の真っ只中なる生徒...
南清璽

連載小説『天女』第五回

南清璽 あの日のこと。令嬢の尊父からあの出奔の計画を糺されたときのことを思い出していた。 伯爵は既に応接間のソファーに座していた。決して、威厳を示さず、むしろ、しとやかといえた。そして、いつもの深みのある落ち着いた物言いが始まった。それは、...
文学

書かれた―祖父  「家族譜」より

飯島章嘉繰り返し 繰り返される夢祖父という見た事の無いもの二度と見る事の無いもの無いものへの信仰不知への限りない接近と離脱長押に上がった肖像の夢不知への限りない接近と離脱無いものへの信仰二度と見る事の無いもの祖父という見た事の無いもの繰り返...
ゴーレム佐藤

夢日記『銀髪』

ゴーレム佐藤 とにもかくにも部屋中動物で充満していた。 匂いとかはさほど気にならなかったが、とにかく、ちょろちょろするこの、リスがうるさい。犬と違ってそこいらじゅうに糞をするのを、僕は一日中集めてまわる。気にするなと思えばいいのだが、とにか...
文学

短歌集『収容所群島』

田中義之 令和と打ち囹圄(れいぎょ)と変換されていくここはまさしく収容所群島 燕子花典雅な構図を繰り返す光琳描く燕子花屏風  差別する言葉をうまく案出し心は隠す地獄の果てに セロ弾きの独奏これは孤独なり観客1人共犯幻想 家族譜の不在の我は何...
文学

短編小説『悦っちゃん』

矢野マミ「そういえばさ、悦ちゃん、亡くなったんだって……」 久しぶりに会った同期からの報告に驚きながらも、いつかその日が来るのを予感していた。『悦ちゃん』は、3人目の育休明けに出会った上司だった。社内の有名人だった。50代半ばで金髪のショー...
いとうあきこ

初投稿エッセイ*名前がない白猫

いとうあきこ 名前がない猫がうちにいる。来た時、真っ白な姿から「ゆき」「しろ」などの名前を考えたが、どれもしっくりとこなかった。 考え疲れ、「人間の中に猫一匹だから『ねこ』でいいか」と今も正式な名前がない。家族はにゃーちゃん、にゃーこなど、...
南清璽

連載小説『天女』第四回

南清璽 私が、こんな風に御令嬢から頼られたのも、そう、その言葉を借りれば「人がよさそうな」という処か。もちろん、当初は、いわば煮え切らない、あいまいな態度を示してしまっていた。何分、伯爵家の令嬢故、向後も続くであろう、出奔などでやんごとなき...
ゴーレム佐藤

夢日記『目覚めよと呼ぶ声あり』

ゴーレム佐藤 たたみかける仕事の雑多さに拘泥しながら、寄せては返す波のように繰り返し運行する星々の海に溺れかけていた。只々打ち続けるキーボードがかちゃかちゃと何かを訴えかけているような気がしたけれど、息をすることも忘れていた僕は自分の喘ぎに...