文学

北條立記

小説風エッセイ『心象の中の少女』

北條立記  自分には、心象の中の傷付いた少女というのがいる。  ヨーロッパの心中映画では、最後はピストル自殺だ。ベッドサイドで恋人を撃ち、男性は彼女をやさしく寝かせ付け、その横に自分が横たわり、こめかみを撃つ。  私の考える心中は、そういう...
南清璽

連載小説『天女』第七回

南清璽  「待って下さる?」  その声には幾分か重みがあった。でも、これは聞こえがいい様に言ったまでで、もう年増にかかろうとしている年頃だったから、生娘の様な声は持っていなかったのだ。だが、その声の深みには、何某かの知性を感じた。彼女には正...
ゴーレム佐藤

夢日記『ぐるぐる』

ゴーレム佐藤  壁がね動いてるんです。ウルトラQのオープニングが極彩色になった感じで。逆に動いてないものがないんです。ワタシ以外の全てが渦を巻いて動いてるんです。ワタシは動けないんです。次第にクダから入ってくる酸素の分子までもが動き回ってる...
文学

詩とイラスト「その都市」

飯島章嘉 ⅰ その都市は極めて奇妙な特徴を持っている すべての建築物は窓を持たず、扉すらない 従ってその都市を俯瞰すると 一見広大な墓地を見るようである しかしどの建築物も天を衝く高層ビルだから 道路から見上げるビル群は銀色の光を蒼穹に反射...
文学

小説『回帰 或いは、テレ・オフ』

田高孝  2017年6月17日、母死去の報が、妹より、あった。深夜だった。私は、かねてからの、計画を実行することにした。  それは、電話回線外し。うちは、電話は、3台ある。携帯はない。そして、インターネット回線で、全部、つながっている。黒電...
文学

短編小説『泡沫(うたかた)の日々』コールドウォーター・ルール2

求道鞠  わかる? 彼女は死なないのよ。夫の中で永久に。だって私よりひとまわりも若いんですもの。  君は微笑んでいる。そのアルカイックにシールされた微笑みにはおそらく、熟年の怒りが含まれているのだろう。几帳面に膝に揃えられた指先が、わずかな...
文学

怪奇心理小説『西ヶ原クロス・ロード』

田高孝  お前が、自分で投げたものを捕らえている間は、すべては、手慣れた技量に尽き、うるところは、乏しい!  お前が、思いもかけず、永遠の競技相手、運命の女神が、かつてお前に、お前めがけて、まさに、熟練の弾みをつけ、神が作り上げた大きな橋の...
まどろむ海月(西武 晶)

詩と写真「星空の出来事」Ⅰ~Ⅵ

まどろむ海月(西武晶)  Ⅰ夜の頁 星空から あなたは振り返る  貴女はふりかえる  ともしびに重なる微笑み  細い指先 星座へと続く階梯は 途絶えたまま この小雨のように 降りしきるものは 何なのか  白い小径の途上で  かさねた出逢い ...
南清璽

連載小説『天女』第六回

南清璽 「今回の仕儀については、さぞかし蔑んでいるのだろうが。」  そんな私の物言いに対して、当のKは、こう述べた。 「完全に否定はしないが、お前が悪事をなさなかったんだから、良かったと思っているよ。」 「それは、友情の顕だともいうのかね。...
ゴーレム佐藤

夢日記『瞼の絵』

ゴーレム佐藤  夕べは寝つきが悪く、マイスリーのお世話になった。  それにしてもなかなか寝付けない。なんか気になる、というかなんかいる気がする。いや、息子は隣で寝てるんだけどそれとは別に「何か」いる。  ようやくウトウトしだしたところ、起こ...