北條立記 洋梨の上に喜んで 北條立記 大きな洋梨の上で、色々な果物がなる木を育てる女性。 その繊細な指で果物の手入れを行い、この世にないオリジナルな果物=ラ・パトゥーセウィシトスを育て作ろうとしている。 その果物は、食べるとお腹の中からほんわかして、目が覚めるよう... 北條立記文学
文学 フェニックス六首 田中義之 ふらふらと心と体揺れながら新しい事探してはどう 偉くなく少し考え息をするそれでも僕は生きながらえる 人間と猫族の差は心意気あってもなくても微笑んでいく 月明かり体に浴びて散歩する月光はやはり詩歌の元素 首振るとおかしいのかと思... 文学田中義之
文学 三つのソネット 飯島章嘉 Ⅰ. 詩人の憂鬱 我々は我々のもっとも好む方法で詩をつくるが 死はつくり出せない 我々は泡を吹く蟹のように 横ばいになりかなしむ 詩人の憂鬱について 我々は充分に討議しあった しかし死人の快楽については 沈黙するしかなかった ... 文学飯島章嘉
ゴーレム佐藤 夢日記『風景』 ゴーレム佐藤 気がついたら煙草がフィルタのところまで灰になっていた。 あわてて灰皿に押し付けた時、いきなり風景が見えた。 蒼い海。蒼い空、風までもが蒼い。 などということは微塵も無く、眼前には渋い顔をした女が一人。ナチュラルに魅せようと... ゴーレム佐藤文学
南清璽 連載小説『天女』第八回 南清璽 診療所の勝手口。やはり、産婦人科ならば、玄関よりお邪魔するのは、控えるべきなのだろう。 「すみません。急患です!」 声をかけてみた。ドアの向こうの物音で少々気が止んだ。何分、数度は、試さなければならなと踏んでいたからだ。 「... 南清璽文学
北條立記 小説風エッセイ『心象の中の少女』 北條立記 自分には、心象の中の傷付いた少女というのがいる。 ヨーロッパの心中映画では、最後はピストル自殺だ。ベッドサイドで恋人を撃ち、男性は彼女をやさしく寝かせ付け、その横に自分が横たわり、こめかみを撃つ。 私の考える心中は、そういう... 北條立記文学
南清璽 連載小説『天女』第七回 南清璽 「待って下さる?」 その声には幾分か重みがあった。でも、これは聞こえがいい様に言ったまでで、もう年増にかかろうとしている年頃だったから、生娘の様な声は持っていなかったのだ。だが、その声の深みには、何某かの知性を感じた。彼女には正... 南清璽文学
ゴーレム佐藤 夢日記『ぐるぐる』 ゴーレム佐藤 壁がね動いてるんです。ウルトラQのオープニングが極彩色になった感じで。逆に動いてないものがないんです。ワタシ以外の全てが渦を巻いて動いてるんです。ワタシは動けないんです。次第にクダから入ってくる酸素の分子までもが動き回ってる... ゴーレム佐藤文学
文学 詩とイラスト「その都市」 飯島章嘉 ⅰ その都市は極めて奇妙な特徴を持っている すべての建築物は窓を持たず、扉すらない 従ってその都市を俯瞰すると 一見広大な墓地を見るようである しかしどの建築物も天を衝く高層ビルだから 道路から見上げるビル群は銀色の光を蒼穹に反射... 文学飯島章嘉
文学 小説『回帰 或いは、テレ・オフ』 田高孝 2017年6月17日、母死去の報が、妹より、あった。深夜だった。私は、かねてからの、計画を実行することにした。 それは、電話回線外し。うちは、電話は、3台ある。携帯はない。そして、インターネット回線で、全部、つながっている。黒電... 文学田高孝