ゴーレム佐藤 夢日記『目覚めよと呼ぶ声あり』 ゴーレム佐藤 たたみかける仕事の雑多さに拘泥しながら、寄せては返す波のように繰り返し運行する星々の海に溺れかけていた。只々打ち続けるキーボードがかちゃかちゃと何かを訴えかけているような気がしたけれど、息をすることも忘れていた僕は自分の喘ぎに... ゴーレム佐藤文学
文学 書かれた―祖母 「家族譜」より 飯島章嘉まず死を見に行くここから始るコントロール出来る死をいただく痴呆症の祖母から空き家の前の側溝でつまずく湿地帯とくねる道に隠される祖母空き家の前の側溝でつまずく痴呆症の祖母からここから始るコントロール出来る死をいただくまず死を見に行く ... 文学飯島章嘉
文学 小説的断章『イヴの煙』 求道鞠◇写真©松岡祐貴◇ あこがれはやはりまぼろしだった。あこがれの甘い残り香も消えた。 やおら烟草に手を伸ばし、火をつける。肺を軽いメンソールの煙で満たすと、胸にいつもよどんでいる、もったりした霧状の虚しさが、ふうわりなだめられる気がした... 文学求道鞠
文学 書かれた―叔母 「家族譜」より 飯島章嘉 耳の後ろが赤く膨れ上がり朝焼けのように蕁麻疹が広がる意味の分からない恐怖をかんじる湿地帯の高い草の中で白い水鳥の環視の中で叔母は叫び声をあげる白い水鳥の環視の中で湿地帯の高い草の中で恐怖をかんじる意味の分からない蕁麻疹が広がる朝焼... 文学飯島章嘉
南清璽 連載小説『天女』第三回 南清璽 確かに、ある種、無償の行いだった。だが、ここに高貴な動機があったのだろうか。敢えて、無償としたのは、昇華させる意味を持たすためだった。そう、あくまで無償の行いだったと。一方、臆面もなく、この昇華という言葉を使うこと自体、いわば自己陶... 南清璽文学
ゴーレム佐藤 夢日記『闇の左手』 ゴーレム佐藤 寝ていたら背後から僕の手を取るものがいる。手を取られていることに気を取られていたら僕の足を掴むものがいる。 暖かい手はすがるように僕を掴んで離さないが、その力の握り方には微かな憎悪をも感じた。 聞こえるは静かな息遣いと指先から... ゴーレム佐藤文学
文学 詩二篇『家族譜』より「書かれた―姉」「書かれた―兄」 飯島章嘉書かれた―姉 「家族譜」より墓地へ駆けてゆく姉を二階の窓から見た学校の制服を隠したのを姉のほこり臭い制服血の付いた便器にしゃがんだ汗のにじむ掌で鈍く赤い姉の隠し持つ勾玉汗のにじむ掌で鈍く赤い血の付いた便器にしゃがんだ姉のほこり臭い... 文学飯島章嘉
まどろむ海月(西武 晶) 詩画集『春の頂から』ー君のいる風景 Ⅳ まどろむ海月(西武 晶)深まる夕闇の中で水底まで透きとおった滑らかな黒の湖水に斜めにさし通した櫂から膨らむ波紋 滴る雫が清澄の音階に流れつづけ・・静かに進む二人きりの小舟君の影が波璃に映った伝説の少女の白い指ようにああ 満天の星空が湖底から... まどろむ海月(西武 晶)文学
ゴーレム佐藤 夢日記『番号』 ゴーレム佐藤 玄関のドアにぶらさがる番号札、いつから下がっているんだろう。 部屋番号とは全く別の番号が手書きで書き記してある。となりの部屋をみるとやっぱり手書きの番号札がぶら下がっている。その隣も向かいも13桁の数字がぶら下がっている、連番... ゴーレム佐藤文学
北條立記 短編小説『赤子の皺』 北條立記 その赤子の手の甲には、深い皺があった。 気になり上着を脱がせてみると、背中の右上にも皺があった。 左の二の腕にも、臍の上辺りにも、右のふくらはぎにも皺が刻まれていた。 目の下には大きな隈がある。 目玉は赤く充血している。 手の小皺... 北條立記文学