「まどか通信」フェニックス

エッセイ

欧州バス旅

野原広子  もうガマンも限界。この身体の奥底からこみ上げる欲望を、今夜こそ叶えてやる。そんな衝動でしでかすとロクなことにはならない。だけどこれほどの惨劇になるとは‥‥。逃げるか。どこへ?  あれは初めて海外旅行に行ったときだから結婚2年目の...
エッセイ

さまざまな人が集まったオンラインのお茶会

浅野卓  先週末、散歩の途中で、出身大学の学園祭に立ち寄りました。コロナの規制も終わりつつあり、模擬店や演奏なども活発な様子で、私も嬉しく思いました。さて、学園祭のテーマが「ぬ」。何を意味するのでしょうか。いろいろな解釈や思いがあるのでしょ...
まどろむ海月(西武 晶)

四つのファンタジー Ⅱ青空の神話

西武晶 昔々 いつまでもいつまでも青空が続き ついに空の青さが星空のむこうにとどくほど 深く窮(きわ)まってしまったことがありました 空は自分の痛々しいまでの青さのその窮みについにたえられなくなったかのように その孤高の極点に 真っ白な馬を...
まどろむ海月(西武 晶)

四つのファンタジー Ⅰ黒犬 

西武晶    「今度の遠足は、火山にしようと思うのだが……。」  「火山って、あの黒犬のですか!」  「そうだ。」  校長の硬い表情が、すこし上気しているのに気づいたが、ペータ教諭はすぐ、  「それは危険です。校長、あまりに冒険だと思います...
エッセイ

マミのA4一枚、こころのデトックス(10)

矢野マミ 27.『死ね!』というアナタはもう死んでいる。  機会を得て、ダンス・表現系のワークショップに参加してきた。2泊3日の丁寧に組み立てられた構成で、主催者の自信と熱意を感じられた熱い体験であった。コロナ禍を挟んでここ数年、様々なワー...
北條立記

洋梨の上に喜んで

北條立記   大きな洋梨の上で、色々な果物がなる木を育てる女性。 その繊細な指で果物の手入れを行い、この世にないオリジナルな果物=ラ・パトゥーセウィシトスを育て作ろうとしている。 その果物は、食べるとお腹の中からほんわかして、目が覚めるよう...
文学

フェニックス六首

田中義之   ふらふらと心と体揺れながら新しい事探してはどう 偉くなく少し考え息をするそれでも僕は生きながらえる 人間と猫族の差は心意気あってもなくても微笑んでいく 月明かり体に浴びて散歩する月光はやはり詩歌の元素 首振るとおかしいのかと思...
エッセイ

ネコは寝ころびヒト育てⅤ

保延薫 7.  ウチのネコは医者に掛かるとき、基本的にはご近所さんだった。一度緊急で入院した後はその入院先にずっと通った。予後を観察していただく必要が出てきたから。  だんだんとお医者様や、医療研究者、医療機関に縁が出来たために、医療全般に...
山田浩貴

イサム・ノグチと「芸術家が役に立つ」ということ

山田浩貴 ●イサム・ノグチの言葉 “僕の創造の情熱の根底にあるのは「役に立つこと」に尽きる。地球上のどこかに、1人のアーティストが影響を与えられる場所を求めてきた”(イサム・ノグチ)  この言葉に触れたとき、意外に感じたのをおぼえている。な...
エッセイ

「音楽はずるいよ。心に直球で来るから」――発車メロディーの作曲者に語られた言葉

山田浩貴   ●音楽の直接性  音楽は「あからさま」な芸術ジャンルである。目をそむけることはできても、耳をそむけることはむずかしい。また、音楽が流れていると耳をふさぐことはなかなかできないものだ(耳には、なぜか、まぶたのような「フタ」がない...