批評・論考

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【特別寄稿】蕪村の発句に於ける時間の考察(六)―作為の時間-

桝田武宗 月天心貧しき町を通りけり 先ず、「郷愁の詩人・与謝蕪村」を書いた萩原朔太郎の解釈を紹介しておきましょう。「月天心というのは、夜が更けているということである。人気のない深夜の街を一人足音高く通って行く。空には、中秋の月が冴えて氷のよ...
批評・論考

【特別寄稿】エドワード・ホッパー『二人のコメディアン』1965年について

矢崎秀行 絵描きは、その最後に「この世への惜別の絵画」を描くことがある。 ホッパー(1882〜1967)のこの絵は、まさにそうした絵画だと言われている。男性はホッパーで、女性は生涯の伴侶だった妻・ジョセフィーン。 これが定説だが、私も同意す...
小森俊明

瀧口忠男氏を悼む

小森俊明 5月初旬に、知り合ってから一年も経っていない知人の瀧口忠男氏が享年63歳で急逝された。先月は坂本龍一氏の逝去を悼んだ文章を寄稿させていただいたが、瀧口氏は今記したように直接の知人である。この10年弱の間に、平均寿命には程遠い50~...
onetree

ヤスパース哲学と精神疾患〜現実的な実在の受容へ〜

onetree カール・ヤスパースは元々は精神科医である。 ヤスパースは哲学において、科学・交わり・真理・人間(現存在)・超越者に関する問題を提示する。 科学はあくまで道具として利用するものとしている。 ※例えばワードプロセッサ、音楽ソフト...
批評・論考

初投稿*滝野川クロニクル2022 ⼟地の亡霊と⾃然の召喚祭

藤井雅実 滝野川は、東京北部に流れる⽯神井川の別名で、その川が通る北区の街の名でもある。 「滝野川クロニクル2022」は、その滝野川地域に関わる歴史や環境を探り、そこに潜むものを様々な観点と技を介して喚び覚ます試みだった。多様な物や資料や映...
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【特別寄稿】蕪村の発句に於ける時間の考察(五) —経過という時間—

桝田武宗 四五人に月落ちかかる踊かな この句は、秋の盆踊りを楽しんでいる情景を詠んだものだと解釈している人が多いと思います。しかしこの句は、そのように表面的な景を詠んだ句ではありません。 先ず、時間的な面から書きますと、キーワードは、「落ち...
山本幸生

「西洋」について(2)

山本幸生 前回触れた、その「最後のピース」であったところの「フランス(特に哲学)」というものについていうと、まず最初の「出会い」はドゥルーズという哲学者の本だった。たぶん一番はじめに読んだのは「アンチ・オイディプス」という(結構有名な)本で...
原田広美

『漱石の〈夢とトラウマ〉』はじめに(前半)

原田広美 「弱者」としての自分を、自分に内在するトラウマを「夢の生成」と「冒険心」をもって癒そうとするすべての人々に本書を捧げます。—また、そうした姿勢を最期まで貫こうとした作家・漱石へ。 あるいは「精神(神経衰弱)」および「肉体(胃潰瘍)...
北條立記

観劇の感激を呼ぶ作法—音楽と裏方の「体験」があるダンス公演—

北條立記 2023/4/22藤村巷平プロデュースダンス公演「PreDanceMusic」@神奈川県立青少年センターHIKARIを観劇して 開演してからリノリウムを引く、椅子を置く、ステージに照明卓があって演者が操作しながら公演が進む……とい...
小森俊明

「教授」(坂本龍一)を悼む

小森俊明 「教授」(坂本龍一)が逝去してから1ヶ月ほど経つが、インターネット・メディアを中心に、その音楽的業績と政治・社会に関する活動の足跡について盛んに記事が書かれている。名実ともに20~21世紀の日本を代表する世界的アーティストであるこ...
批評・論考

『ギリヤークさんと大拙』試論(三)-2020年・横浜港公演をきっかけにして-

田中聡左がギリヤーク尼ヶ崎さん、右が筆者〈5〉「個人的生命の宇宙的生命に対する関係を感得す。」    大拙(=鈴木大拙)、そしてギリさん(=ギリヤーク尼ヶ崎)の中には、東洋的な「一」とも言うべきものが脈打っている。 そしてそれはまず、(少な...
原田広美

癌再発から100才まで生きたハルプリン、精神分析とセラピー~電子書籍版『やさしさの夢療法』あとがき(後半)

原田広美 今年(2021)年5月に、100歳の天寿をまっとうして逝去したハルプリンでしたが、40代には自身も癌を発病して切除手術を受けたものの、5年後には再発に見舞われました。しかし再発後は、手術や化学療法を手放し、若い頃から探求し、ゲシュ...
批評・論考

【特別寄稿】蕪村の発句に於ける時間の考察(四)―不可逆という時間―

桝田武宗 前回まで「時間の認識」「自然主義」「モンタージュ」について書いて来ました。今回からの四回は、蕪村の句を例に挙げながら句に詠み込まれた時間の分析について書いて行きます。  秋の空きのふや鶴を放ちたる  凧(いかのぼり)きのふの空のあ...
山本幸生

新連載「西洋」について(1)

山本幸生 あまりにもテーマが大きすぎるので、とりあえず私自身と「西洋」というものとの個人的な関わり、というあたりから語り始めてみたい。 私の大学での専門は数学だが、当時の私は西洋という点に関していうと、ごく素朴な、さらに言えば、かなり幼稚な...
山家誠一

舞台覚え書き『ストーリーを消滅させた身体の強度』

山家誠一 以下は会場でのアンケートとして書いたものです。山家誠一 2023-4-7 DA・Mの公演を見るのは久し振りだった。「襲撃・Red carpet」(2023.3.26.東京・高田馬場 プロト・シアター)はキューバの反体制作家レイナル...
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[特別寄稿]スサノヲと中上健次 あるいは嘆くボブ・マーリーと哭きいさちる中上健次(四)

矢崎秀行 スサノヲと中上健次⑦ つい連想してしまうのだが、それはあたかも奄美沖縄の《おなり神信仰》を私たちに想起させる。《おなり神》は兄弟を守護するとされる姉妹の霊威のことである。沖縄学の父・伊波普猷(1876~1947)が見出し、民俗学者...
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【特別寄稿】蕪村の発句に於ける時間の考察(三)―俳句とモンタージュ―

桝田武宗 今や俳句と映画制作に於けるモンタージュ(編集)が大きく関わっているということは常識になっていますが、簡単に説明しておきます。 モンタージュ理論は、ソ連の映画監督・セルゲイ・エイゼンシュタインが提唱した映像編集理論です。エイゼンシュ...
原田広美

どうしてセラピーを??そしてゲシュタルト療法とは?? ~電子書籍版『やさしさの夢療法』あとがき(前半)

原田広美 本書は、母による抑圧などを契機に、成人後も自信喪失や孤独感が解消できず、加えて管理体制の強い職場への勤務による鬱や、夫のモラトリアムなどに悩んだ私が、学生時代からの心身の解放と自己表現、および二〇代全般を通じての我身の〈苦悩の解消...
山本幸生

東洋「哲学」について(4)

山本幸生 私の場合、「インド系統」後において、イスラム系やユダヤ思想関連、更には日本思想などもいくつか通過してから、ようやく「西洋哲学」というのに本格的に取り組むようになり現在に至る、ということだが、ここはあくまで「東洋哲学」というのがテー...
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[特別寄稿]スサノヲと中上健次 あるいは嘆くボブ・マーリーと哭きいさちる中上健次(三)

矢崎秀行新宮の熊野灘に面した海岸に座る中上健次スサノヲと中上健次⑤ けれども、ジャマイカのトレンチタウンと新宮の路地には大きな違いがあった。負を負った被差別地域であることは共通するものの、トレンチタウンは今なお続く被差別の貧民街だが、新宮の...