批評・論考

批評・論考

二種の四角片Double Squaresが誘う不穏と魅惑                  

藤井雅実  このテキストは、二十世紀後半にポストモダンと呼ばれた近代文明の転換期から、コロナ禍や気候変動、世界各地での不穏な社会状況が覆う今に至る文化の基盤の仕組みを捉え返し、その層構造から今日の課題を探りたいと思います。まず、そこに踏み込...
批評・論考

ゴミ収集労働における「相互承認」と「追跡調査可能性」(五)

田中 聡 〈9〉盲目概念の視覚的意味 今回は前回の(四)の最後で述べた「視点」と「否定性」の概念を考慮しつつ、その否定性が同じく前回に提起された無限判断の判断としての成立にどう関わるかまでは無理としても、こうした文脈での「無限性」の成立まで...
批評・論考

アートサイコセラピーと人智学芸術療法そしてティク・ナット・ハン

英国認定アートセラピスト 間美栄子(心療内科・精神科ささえ愛よろずクリニック) 英国においてアートセラピーは精神療法として確立しアートセラピストは国家資格者として医療機関で医療として芸術療法を行なっている。 筆者は、20年間英国でアートサイ...
原田広美

『やさしさの夢療法~夢のワークと心の癒し』1994年版:第4・5・6章

原田広美  本書は刊行後、書店でフリーライター様や雑誌編集者の目にとまり、『健康現代』『モア』『ノンノ』『とらば~ゆ』『名前のない新聞』などから直接の取材を私自身が受け、各々の誌・紙面で、私と本の写真入りで紹介されました。*以前のこのweb...
山本幸生

【日本について】(1)~(4)

山本幸生 (1) 私は、おそらくこの国の中に一定数存在するであろう「日本そのものに違和感を持つ」者の一人である。 以下、とりあえず私が「日本」について気に入らない点を挙げていくと、 ・「人間関係」以上の価値が、少なくとも明瞭な形において存在...
MIREI

心理学から見た芸術

MIRIE イギリス大学院の心理学部で芸術や神経美学などについて学んだので、その一部概要と感想を書いてみようと思う。 「芸術とは何か」「どのような特徴が芸術作品を構成するのか」については古くから哲学者ほか色々な人々によって、現実の模倣だとか...
批評・論考

ゴミ収集労働における「相互承認」と「追跡調査可能性」(四)

田中 聡 〈6〉自己の非自己化は「無限判断」と関わるのか?  私は本連載の前回において、有機物の循環や有価物としての廃棄物の流通について論じたが、そもそもなぜ我々は、そういった循環や流通、更にはいわゆる「リサイクル」をしなければならないのだ...
小森俊明

木村雅信氏の室内楽作品について      

小森俊明 以前、当マガジンに「独創的な作曲家、木村雅信氏のこと」を寄稿し、その作品について執筆することを予告しながらもそのままになっていた。本稿では氏の室内楽作品10曲について書いてみたい。なお、記載順序は作曲年に従っている。 ⚫︎デュオI...
批評・論考

ヨ―ロッパ生成

田高孝 ギリシャの観劇場 ピューリタン・エクソダス(アメリカ人)ユダヤ人の力を借りて、地球文明を作る。2世紀で。 「私は、この世を完成させに来た」(キリスト)ユダヤ人(白人種)石工の仕事師;エジプトでは、ピラミッド作り、ギリシャ・ローマでは...
山田浩貴

創造的エネルギーの獲得のために――ルーティーン化と驚き

山田 浩貴 プロンプト執筆:山田浩貴、画像作成:DALL·E by ChatGPT 世界があなたに語りかけることに開放的でなければならない。人生とは経験の流れ以外の何ものでもない――その流れの中を、より広く、そしてより深くそして泳げば泳ぐほ...
山田浩貴

三十一の言葉の牢獄

山田 浩貴 プロンプト執筆:山田浩貴、画像作成:DALL·E by ChatGPT    このタイトルの言葉は、短歌について、寺山修司(1935年に生まれ1983年に没した。歌人、詩人、劇作家、演出家、映画監督、競馬評論家とマルチな才能を発...
原田広美

新刊小説『ファム ファタル』南清璽 についての、書評的なエッセイ

原田広美 まろやかな筆致にして鋭利な心理描写を取り入れた本格文芸小説  南さんの初刊行小説『ファム ファタル』。今のアニメ風の表紙絵もいいが、最初のものもなかなかよかったので、上に掲載させてもらいました。  南さんの筆致は非常にまろやかであ...
原田広美

*『夢十夜』で漱石を癒す(第五夜~第十夜)

原田広美 *第五夜「こんな夢を見た。/何(なん)でもよほど古い事で、神代(かみよ)に近い昔と思われるが、自分が軍(いくさ)をして運悪く敗北(まけ)たために、生擒(いけどり)になって、敵の大将の前に引き据えられた。......」  夢の中の自...
山本幸生

【「西洋」について】(7) (ドイツおよびドイツ系に関して)

山本幸生 当然のことだが、ドイツについて言うと、「戦前」と「戦後」では全く印象が変わる。かつて私が好きだったところの「ドイツ」というのはもちろん「戦前」までのドイツということで、戦後ドイツにはほとんど興味が持てない。 私のイメージする(とい...
小森俊明

池田一氏との協働と共著執筆について

小森俊明  アース・アーティストの池田一氏は、水を切り口とした環境アートの世界的な展開で知られている。これまでに筆者は、タージ・マハル旅行団の流れを汲むフリー・インプロヴィゼーション・ユニット「空観無為」のメンバーとして、池田一氏のパフォー...
批評・論考

ゴミ収集労働における「相互承認」と「追跡調査可能性」(三)

田中聡 〈4〉ゴミ収集における市民と行政の乖離の修正と「情報」 前回まで述べてきた相互作用、相互承認について、同じく前回まで述べてきたことのおさらいをしつつ、それを歴史的且つ原理的に考究していく事の意義を再確認するところから、今回の拙い論考...
まどろむ海月(西武 晶)

四つのファンタジー Ⅱ青空の神話

西武晶 昔々 いつまでもいつまでも青空が続き ついに空の青さが星空のむこうにとどくほど 深く窮(きわ)まってしまったことがありました 空は自分の痛々しいまでの青さのその窮みについにたえられなくなったかのように その孤高の極点に 真っ白な馬を...
まどろむ海月(西武 晶)

四つのファンタジー Ⅰ黒犬 

西武晶    「今度の遠足は、火山にしようと思うのだが……。」  「火山って、あの黒犬のですか!」  「そうだ。」  校長の硬い表情が、すこし上気しているのに気づいたが、ペータ教諭はすぐ、  「それは危険です。校長、あまりに冒険だと思います...
山田浩貴

イサム・ノグチと「芸術家が役に立つ」ということ

山田浩貴 ●イサム・ノグチの言葉 “僕の創造の情熱の根底にあるのは「役に立つこと」に尽きる。地球上のどこかに、1人のアーティストが影響を与えられる場所を求めてきた”(イサム・ノグチ)  この言葉に触れたとき、意外に感じたのをおぼえている。な...
山本幸生

【「西洋」について】(6) (ドイツ・ロシアに関して)

山本幸生  私が十代の頃は、私にとって「西洋」といえばほぼドイツあるいはドイツ系のことに他ならなかった。むろん、英仏など他の国の人たちの名前もいくらか知ってはいたが、なぜか「ドイツが一番」と思い込んでいたのだ。たぶん当時ドイツ系の古典音楽が...